古典ミステリー

そんな所散歩してどうするのか 屋根裏の散歩者(乱歩)[感想]

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主人公はどのような人間か

主人公は、学校は出たものの就職しても長続きしないですぐにやめてしまい、とうとう職探しもしなくなってしまっています。また、遊びでもすぐに飽きて長続きせずに、結局何がやりたいのかわからないような人物です。現代でもよく聞く話ですので時代は変わっても人のおこないはそうは変わらないものだと思いました。

仕事をしないでどうやって生活をしているのかといえば、親からの仕送りで生活をしています。つまりは、就職をしなくても当面生活に困ることのない暮らしをしていたのです。人間、仕事をしないで生活に困らないのでしたら、さぞかし楽しく暮らしていけるのではないかと考えますが、この主人公は必ずしも楽しく暮らしているとは思えません。

暇だと人はろくなことを考えない

人間暇だとろくなことを考えないということはその通りだと思います。そしてそのろくでもない考えを思うだけではなくて、実行に移していったのが本作の主人公になるのです。彼が何をおこなったかは、もう題名を見てもらえれば大体想像がつくとは思います。まったくその通りです。

屋根裏の散歩、もし皆さんが屋根裏を散歩するとしたらどうしたいと考えますか。想像してみましょう。そこは共同住宅でいろいろな人が住んでいます。もし他人の普段見ることのない姿を見知ったとしたら、それを新鮮に思うのでしょうか、それとも違う一面を見てしまいがっかりするのでしょうか。

そしてさらによからぬことを考え始めていませんか。このように考えることはけして難しいことではなく、想像力が少しあれば十分思いつくことができるでしょう。そして、さらにエスカレートしていくとしたらどのようになっていくでしょうか。エスカレートしていくとどんどんと際限なく空想や妄想が広がっていきます。

さらにエスカレートして

よからぬことを考えてしまうにはいくつかの要素が必要になります。まず、ある第三者に対するいわれのない勝手な思い込みがあります。第三者からしたら迷惑な話ですが、主人公の胸の内にはある感情がむくむくと湧き上がっていきます。

次に小さい茶色の瓶の登場です。キーアイテムの登場です。その瓶の存在を主人公が知ったからこそ、そのよからぬ事の実現性が高まっていってしまいます。ただここまでですとただの願望・妄想の範囲でおさまっていたと思います。

しかし、そこにある状況が発生します。その状況というのは再現性があるもので、そのようなチャンスはもう二度とないというもではありませんでした。主人公に芽生えた感情×茶色の瓶×再現性のある場面がそろったときに主人公はとうとう実行に移します。

思うことは、やっぱり明智はずるい

主人公はその実行したことが、彼がしでかしたことだと発覚しないように、どこにも不自然な跡を残さないよう最新の注意をはらいしました。あやうく細工し忘れたことに気が付いて戻っていくようなこともありました。

しかし、完全、完璧ということはこの世の中にはないのだとあらためて思いました。そうなのです。明智小五郎がいるのです。明智は些細なことから不自然な状況をみつけていきます。そこはさすが明智と思うところであります。

加えて犯人のとった行動をまねしてみてことの真相に近づいていきます。ただ犯人と対峙するときにブラフといいますか、かまをかけるといいますか、やっぱり明智はずるいなぁと思わずにはいられません(ですが、多くの探偵の手口はずるいです)。

 

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以上

書籍データ
屋根裏の散歩者
著者 江戸川乱歩
青空文庫より書籍データをDLしています