古典ミステリー

◇感想 奇賊は支払う 烏啼天駆シリーズ・1 海野十三

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盗賊Vs探偵

いわゆる盗賊Vs探偵のパターンです。盗賊は、奇賊烏啼天駆(うていてんく、〇〇天狗と考えてください)といいます。探偵の方は、頑張り探偵?袋猫々(ふくろびょうびょう)といいます。

何か成果というよりはがんばっています!という探偵のようです。烏啼天駆は袋猫々のことを、一度も(天駆を)とらえたことがなくただ天駆の名声に便乗しているといい、袋猫々は烏啼天駆を捕まえられるのは自分だけだといっています。

まるでコントのよう

二人は好敵手という間柄になるのですが、物語のストーリーはコメディ、コントです。登場人物は少なからずどこか間がぬけているように思えるのは、作者の海野十三の語り口がおもしろおかしいからで、登場人物のせいではありません。

袋猫々の名前だけでも、さっそうと登場して難事件をたちどころに解決していく名探偵、というイメージはいっさい持てません。天駆も袋猫々とはりあっているレベルなので同じようなものです。しかも天駆のポリシーは、盗賊は相手に代償を払わないといけない、です。

しかし、これらの設定だけでも読み進めてみたくなります。

猫々は天駆専門?

さて烏啼天駆は盗賊ですので何かを盗まなければなりません。つまり事件がおこるわけです。どのような事件かといいますと、成金の刈谷氏のもとに脅迫状が届いて、しかもそれはまったく丁重この上ないものでした。

しかし、どんなに丁重なものでも、内容が脅迫状であればそれはあくまでも脅迫状です。そこで刈谷氏は探偵袋猫々に相談をしました。なんでも袋猫々は烏啼天駆専門らしいです。設定がいちいちコントです。

やっと袋猫々が登場

ようやく探偵袋猫々が登場します。その容姿も少しあきらかになります。黒メガネをかけてひどい猫背という設定です。ここはあえて触れずにスルーします。猫々はどのように事件を解決していくのかとても興味深いです。

物語はコメディでありコントのようですが、作者の海野十三は、SF小説、推理小説の分野において、日本では先駆者のひとりなのです。

そのような人物が生み出したキャラクターがこのまま終わることは思えません。しかし海野十三の語り口はどこか漫談、コントのようですので、もしかしたらこのまま話が進んでしまうのではないかと心配になってきます。

事件はきっちり起こります

その犯行手口はあまりにも大胆で、警官がたくさんいる中で堂々と実行されていきます。しかもしばらく何の疑いもなく話が進んでいきますが、この犯行の手口もコントのようです。

それでは探偵袋猫々はその犯行が行われているとき、どのように事件に対峙したのでしょうか。探偵小説、推理小説っぽくなってきています。ついに袋猫々は敵アジトに侵入してしかも無事生還します。

どんでん返し

袋猫々が無事に生還して事件は解決に向かうことになります。袋猫々が烏啼天駆を出し抜いたと思っていたのですが、実は烏啼天駆が袋猫々を出し抜いていたのです。ここの種明かしが物語の一番の読みどころです。

一時は出し抜かれたと思われた烏啼天駆ですが、どのように袋猫々を出し抜くのでしょうか。そして、烏啼天駆はだれにどのような代償を与えたのでしょうか。烏啼天駆シリーズ・1とありますので、シリーズものです。

烏啼天駆と袋猫々、どこか似たもの同士の掛け合いがまだまだ続いていきます。

今回はこれまで。

 

書籍データ
奇賊は支払う 烏啼天駆シリーズ・1
作者 海野十三
青空文庫から書籍データをDLしています。