古典ミステリー
黄金虫 エドガー・アラン・ポー
読後の感想
この物語は、黄金のような虫、を主人公がつかまえたところからはじまります。そして、その黄金虫の存在の位置づけが重要になってきます。
物語のはじめでは、黄金のようにきれいで新種の昆虫かもしれないというように、その存在は特別なものとして扱われています。また、黄金虫の絵を紙に書いて見せたら、髑髏みたいだといわれてムッとしてその紙を燃やそうとした話や、その黄金虫が元で主人公が病気になってしまったと家人が考えてしまうといった逸話が語られたりと、その黄金虫を軸に物語が進んでいきます。
その後、三人で山の中に探検にいくという展開をむかえますが、それまでキーアイテムで特別な存在として物語の中心にいたはずのこの黄金虫ですが、いつの間にかキーアイテムとしての存在でなくなっており、別のものがキーアイテムとなっていきます。それだけではなくその黄金虫は単なるアイテムとして使われる道具になってしまいます。
この小説で一番の読みどころだと私が思うのは、キーアイテムが黄金虫から本当のキーアイテムにかわっていくところで、その真のアイテムに話の中心が移行していくと物語の様相もガラリと変わっていくことになります。すっかりミステリー小説の顔つきに変わっていきます。また最後もこれはどう解釈すればいいのかという気になります。そのときの人はどうなったのか、それでは今回はどうなるのかと考えるとヒヤッとしてしまいます。
現代のミステリーほど複雑ではありませんし、今となってはベーシックな謎解きではありますが、だからこそ、基本的ミステリーの一つのパターンの土台になっているのではないでしょうか。ポーは好きな作家ですので他の作品も読んでいこうと思います。人それぞれ気になったところは違うかもしれませんが、読みどころが色々あるのもまた小説の楽しめるところではないでしょうか。
以上